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【業界研究】製薬・医薬品業界をまる裸に!その特徴をわかりやすく解説!

こちらのWebサイトは移転しました。

gonshiです。

 

僕の業務と関連が深い製薬・医薬品業界について、その特徴をまとめました。

製薬・医薬品業界と言っても、新薬、後発品、兼業など業容は様々です。今回は、主に新薬メーカーに焦点を当てます。

これから製薬・医薬品業界を目指す人の参考になれば幸いです。

 

目次

 

医薬品ビジネスはリスキーである

医薬品の開発はとてもリスキーです。

一つの医薬品を世に送り出すために多いもので何百億、何千億円という莫大な研究開発費がかけられますが、それが新薬となる保証はどこにもありません

他の業界であれば、投資をした分、それ相応のアウトプットが得られますが、医薬品はそうではないのです。僕たちの知らないところで、陽の目を見ずに終了となった医薬品開発プロジェクトがごまんとあります。

 

安定経営の保証はない

苦労の末、新薬として販売までこぎ着けたとしても、その売上で開発に投資した費用を回収できるかどうかは分かりません。発売当初の売上は見込めても、将来においてどうなるかは誰にも分かりません。

ビジネスは競争です。もっと有効性の高い医薬品が将来発売されるかもしれません。

そして、何より医薬品には「特許」という問題がつきまといます。

新薬は一定期間、特許によりその権利が守られ、独占的に販売することができますが、その特許もいつか必ず切れる時が訪れます。

有望な医薬品でも特許が切れれば全く同じ有効性を持つ後発医薬品ジェネリック医薬品)が市場に登場します。安価な後発医薬品への切替が進むと、もともと新薬を販売していた企業の売上は落ち込み、経営を悪化させる可能性があります。

いつか訪れる売上の悪化を回避するには、新しい医薬品を次から次へと生み出す以外の道はありませんが、その道は険しく簡単にはいきません。

 

不況に強い

製薬・医薬品業界は他の業界と比べて景気に左右されないという特徴があります。

医薬品を使う人は、もちろん病気で苦しんでいる患者たちです。

人間がいる以上、必ず誰かが病気にかかります。その病気が薬で治るのであれば、景気に関係なくお金が使われます。

 

国の政策を受けやすい

不況に強いことは確かに魅力ですが、別の側面からも特徴を知っておくべきです。

製薬・医薬品業界は国の政策を受けやすいという特徴もあります。

日本は少子高齢化が進み、高齢者の医療費が膨らみ続けている問題があります。実は医薬品の販売価格は「薬価」として国が決めていて、メーカー側が販売価格を自由に決めることはできません。薬価は国によってコントロールされており、新発売した時の価格が永遠と続くわけでなく薬価は改定されます。

薬価以外にも法改正などの影響を受けます。こうした国の政策によって製薬企業の経営は大打撃を受けることがあります。

 

グローバルな展開に強みがある

製薬・医薬品業界は、他の業界よりも業界全体がグローバル化している業界です。

人のからだの構造や仕組みは、国や地域で多少の差はあれど似たようなものです。日本人に効き目があった医薬品はアメリカやヨーロッパなど他の国で販売しても効き目があるでしょう。

もちろん国が変われば、科学的な根拠を示すなど手続きに期間やコストはかかりますが、医薬品自体に国境はなく、グローバル展開しやすい特徴があります

国内大手企業では海外売上比率が半数以上を超えています。逆に、日本の市場にアメリカやヨーロッパの企業を中心に外資製薬企業が進出しており、国内企業と凌ぎを削っています。

他に、グローバル化のトピックとしては国内企業による海外企業の買収も増えています。つい先日の武田薬品による「シャイアー」の買収は業界の衝撃でした。

グローバル化が進んだ製薬企業の入社難易度は高い傾向があり、特に研究開発職では入社時に英語の能力が強く求められます。

 

規制が厳しい

医薬品は生命に直結します。副作用によって不幸にも命を落としたり、重篤な後遺症が残るリスクもあります。

近年、日本の「化血研」の杜撰な企業体質による法令違反も発覚しましたが、規制を守ることが当然求められます。食品にも食品衛生法による規制がありますが、医薬品もそれと同等以上に厳しい規制があります

新商品を開発した時、医薬品と食品では大きな違いがあります。食品の場合、新商品は企業の判断で自由に販売を決めることができますが、医薬品の場合はそうはいきません。新しく開発した医薬品を日本で販売したいのであれば、その開発品の有効性などの科学的根拠を集めて、国の審査を受けなければなりません。そして、厚生労働大臣の承認をもって初めて販売することができます。

最近では国ごとで定められていた規制を国際調和しようという動きも活発で、この規制が段々と厳しくなっています。

 

営業スタイルにも特徴

医薬品の営業はMRという資格を持った各企業の営業社員が務めます。このMRがどういう仕事かというと、医師のもとへ薬の情報を提供し、自社の薬を使ってもらうように促します。

他の業界の営業と違うのは、実際の商品を持って営業をするのではなく、あくまでも情報を提供することです。

MRが病院や薬局へ実際の製品を持って納品に行くことはありません。

 

高給・高年収

年収比較サイトで確認してみると分かります。

製薬企業でも新薬メーカーは軒並み高給で、年収が高めです。年収が高いということは、それだけリスクを負っている、また厳しい仕事が求められるとも言えます。

簡単に真似して作れない高付加価値品である医薬品はたったの数ミリグラムでも高価です。

高利益率の分、従業員に高い給料を支払うことが出来るのです。後発品メーカーよりも新薬メーカーが年収が高いのも、安価な後発品よりも新薬が高価であるためです。

 

アウトソーシンング化により裾野産業が活性化

 一つの薬を生み出すためにかかる開発費が企業の経営を圧迫していくと、企業はこれまで内製化していた部分を外部企業へ委託して、よりコストを抑え、効率的に開発を進めようという動きが活性化しました

その結果、製薬・医薬品業界を取り巻く関連企業が増え、その裾野が広がっています。

これらを受託機関と呼びますが、臨床開発の受託企業はCRO(Contract Reserch Organization)、製造の受託企業をCMO(Contract Manufacturing Organization)と呼びます。他にも、試験・分析の受託企業や営業(MR)の受託企業などもあります。

今後も流れは変わらないと言われており、将来は研究開発など新薬開発の要でもある部門においてもアウトソーシング化が進むかもしれません。

さもなれば、企業内で仕事が奪われ、リストラにあったり、転職していく人も増えるでしょう。

 

売上高に占める研究開発費が高い

製薬・医薬品業界は他の業界と比べて売上高に占める研究開発費の割合が高いことが特徴です。

製薬企業は売上のうち、だいたい20%を新しい医薬品の開発へと回しています。そうやって次から次へと医薬品を開発できる環境を整えています。厳しい時代だからと研究開発費を抑制してしまえば、新薬が生まれる確率は更に低くなります。

新しい薬を開発し続けることは新薬メーカーのビジネスモデル上、最も重要なことです。

ここ数年は、他の企業、大学など公的研究機関との共同研究やオープンイノベーションも活発です。AI創薬など最新の知見を使ってより効率化重視の流れがあります。なるべく少ない費用で効率的に開発することが今後ますます求められます。

 

企業の未来予想は「パイプライン」で分かる

最後に、企業を選ぶ時に見るべきポイントを紹介します。企業のホームページ上のあるページを見るだけでその企業の未来の予想が立てられます。

ホームページには「パイプライン」と書かれた項目があり、そこへアクセスします。

このパイプラインこそが、その企業の医薬品開発状況を示したものです。

パイプラインの見方ですが、縦へ見ていくと現在開発状況にある候補品の数がわかります。掲載品目が多いと今後に期待が持てますが、ここに掲載があるもの全てが将来の医薬品となる保証はありません。

次に横へ見ていくと、前臨床、臨床試験(フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3)、承認申請、販売承認のような言葉が並んでいます。それぞれの候補品が現在どこのステージにあるのかを示しています。もちろん、右にあればあるほど開発が進んでいることを意味し、期待できます。一つの医薬品の開発には10年以上かかることもあるので、右にあれば数年で上市される期待がありますが、左にあればあるほど上市されるまでにまだまだ5年以上かかることも考えられます。

パイプラインには、他にもいろいろな情報が含まれています。

候補品には企業独自の開発コードが付与されており、対象となる疾患がわかります。これを見ることで、各企業がどの領域に力を入れているかもわかります。

他にも、自社開発か他社との共同開発か、はたまたた他社とのライセンスによる導入であるかなどの情報がわかりますし、どこの国・地域で開発中であるかも知ることができます。

製薬企業はパイプラインでその企業の未来がわかるため、企業選びではこのページを読み解くことが重要です。他のページには耳障りよく研究開発に力を入れてるとか書かれていても、パイプラインに開発品目がなければまだまだ先は長いとわかります。

 

まとめ

いかがでしたか。

 

製薬・医薬品業界が置かれている状況は明るくなく、競争が今後ますます激化すると予想されます。

医薬品は病気で苦しんでいる患者さんを救うことができるものであり、仕事を通じて医療の発展へ関わることを実感できればそのやりがいの大きさも一入です。