【経験談】20代の貴重な時期をベンチャー企業で過ごして思う6つの価値
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gonshiです。
僕は20代半ばから30歳目前までベンチャー企業に在籍していました。より限定すると今をときめくバイオベンチャーです。その企業には大きな夢があり、入社した時は社内は希望で溢れていました。今も形を変えて、その企業は存在していますが、段々と経営が傾き退職を決めました。
在籍中は僕自身もその実現のために、出来る限り自分の時間をその企業に捧げ、尽くしていました。
それは僕だけでなく、そこにいた社員も同じように自分を犠牲にして、尽くしていたと思います。
現在は退職していますが、その唯一無二な経験が後々の転職で評価されたことがありました。
目次
バイオベンチャーとは
ベンチャー企業のイメージは色々です。
ITベンチャーというのは、ベンチャー企業の代名詞のようなものだと思います。ざっくり言うと、先端技術などを武器に今までになかった発想の新しいサービスを世の中に提供することで、僕たちの生活をより快適に・より便利にしようとする企業です。
バイオベンチャーというのも、だいたい同じで、あとはその対象が僕たちの健康や医療などヘルスケア分野であることの違いかと思います。
他のメディアでも、だいたい同じようなことが書かれています。
このバイオテクノロジーという分野は、日本政府もご存知の通り成長戦略に掲げているものです。
従って、バイオベンチャーというと、世の中からの注目も浴びやすく、株式の市場でも大化けすることが期待されるような存在となっています。
日本国内のバイオベンチャーの成功事例というのは多くなく、これからはますます期待されますが、海外へ目を向けるとアメリカのAMGEN(アムジェン)はバイオベンチャーの成功例として有名です。
アムジェンも創業時はたったの3人でスタートしたベンチャー企業であり、それが今では世界各地に2万人を超える従業員を抱える企業へ変貌しました。
バイオベンチャーにいる人たち
本題に入る前に、バイオベンチャーにいる人たちのことを書いてみます。
バイオベンチャーには、大手製薬企業で経験や実績を積んだ人がいます。
特に、このような人たちは経営サイドや、実務担当でも部長などマネジメントにいることが多いと思います。
バイオベンチャーが目指す医薬品や再生医療の分野というのは、他の業界と比べても「規制(レギュレーション)」が多い業界です。
この規制は、消費者や患者を守るためには無くてはならないものですが、この業界で起業し、事業化の成功に至るまでのハードルを高めている原因になっていると思います。
さらに、事業化の先にある収益化までの道のりも険しく、企業の資金調達の面でも相当なリスクがあります。
バイオベンチャーは保有技術やビジネスモデルが画期的であるだけでは通用せず、成功するにはその規制をよく理解したうえでの事業戦略やノウハウが必要で、経営・マネジメント層にいる人たちは業界経験が必須です。
人気が高い研究開発の部門では、その中心は製薬企業で経験を持った人たちです。技術志向の企業では、大学など公的研究機関で研究を続けてきた人も戦力になります。
ベンチャー企業こそ、人数が少ないゆえに、一人一人の研究力が重要になっており、研究開発部門のスタッフの多くは「博士」を持った人たちです。
しかし、そうは言ってもベンチャー企業は「人材集め」に苦労します。それは同業他社と比べて企業規模、知名度、待遇面が劣ることです。
一人一人の優秀な力が求められる反面、人が集まらないのがベンチャー企業なのです。
そのため、当時の僕のように大学などで「バイオテクノロジー」に関する一定の素養や研究経験があれば、修士卒や学部卒でも入社に対して寛容なところが多いと思います。
経験も重要ですが、それがなくても「若くて、諦めず、粘り強く挑戦でき、何よりもやる気がある人こそがバイオベンチャーでは重宝される人」だと思います。
業界未経験でバイオ分野の研究開発部門へ進みたいと考える人は、一度ベンチャー企業で経験を積み、それをステップとして踏むことも考えるのもアリです。
ベンチャー企業に在籍する6つの価値
それでは、実際に在籍して感じた6つの価値をまとめてみました。大手企業と比較しています。
① フットワークが軽くなる
ベンチャー企業は意思決定が早いです。
過去、僕は従業員数千人以上の東証一部のメーカーに新卒入社しました。その企業と比べても意思決定が明らかに早かったです。
それには明らかな理由があります。
ベンチャー企業というのは、大手企業と比べて従業員数が少なく、経営トップ(社長)とも面と向かって話ができるほどの距離感があります。
経営側と実務側の距離が近いことは、仕事にスピード感が生まれ、そこで仕事をする人にとってもメリットです。
大手企業にいても、なかなか感じることが難しい「会社(経営)が動いている感覚」というのを感じることができます。大手企業で、このような感覚を持つには出世するしかなく、部長などマネジメント層にならない限り、若手の仕事は与えられた仕事を淡々とこなすことです。自分がしている仕事が何故、必要であり、それが他の部門の仕事とどのように結びつき、事業に対してどのような影響があるか見えにくい環境があります。
一方、スピード感があるベンチャー企業では、自分の仕事に対する目的意識や事業面との関わりを強く持ちながら仕事に取り組めます。
何故、スピード感が大事かというと、スピード感があるなかで仕事をこなすことでどんどん仕事に対するフットワークが軽くなっていきます。
退職して気づくことですが、恐ろしくも人間というのは慣れる生き物です。
その環境に身を置くことで、主体的に仕事に取り組む資質というのが身に付き、将来、転職で他社に移ったとしても、そのフットワークの良さが自然と発動するイメージです。
反対に、スピード感があるということは、それだけ社内はぐちゃぐちゃし、バタバタする可能性があるということです。つまり、決まったことが突然覆ったり、予定していたことが急に変更されたりと、働く側にとっては良いことばかりではありません。そのなかで対応する能力が求められます。
だから、それを不満に退職していく人もいるのがベンチャー企業の真実です。
② 若手から色々な経験が積める
一般論として、大企業の仕事というのは、組織で仕事が細分化され、人それぞれの役割がはっきりしています。大企業では、自分の仕事以外の仕事をすることは少なく、組織の枠を超えた部門横断的な仕事は希少なものです。
一方、ベンチャー企業は、組織も小さく、人も少ないため、少数精鋭です。
ベンチャー企業において「経験がない」は通用せず、経験がなくても「経験しなければならない」ことが多くあります。
ベンチャー企業でも人それぞれの役割は決まっていますが、その線引きは曖昧であり、仕事も縦割りというよりは横断的なものになりがちです。
従って、一人に課せられる業務幅というものが広くなり、自分の仕事に区切りがなく、部門横断的な仕事も多くなっていきます。
社内にノウハウが少ない新しい仕事への挑戦の機会も多く、これらの仕事では必ずと言っていいほどに課題に直面しますが、その問題解決のプロセスが後々貴重な経験となることもあります。
僕の例で言えば、アメリカへの出張を命じられ、2週間ほど滞在させてもらいました。
こういうチャンスの機会を若手にも平等に与えてくるのがベンチャー企業の良いところであり、それは大手企業にいては、なかなか経験できないことだと思います。
③ 年齢で左右されない実力社会
大手企業の出世と言えば、年功序列が当たり前です。
こういう古い体質は、仕事が出来て、意欲のある若手にとってはつまらないものだと思います。仕事が退屈なものになっていく原因かもしれません。
一方、ベンチャー企業は年齢は関係なく、若くても部下が数十人いることも珍しくないです。
若くても能力があれば責任のある仕事を任せられ、実力に応じた正当な評価が受けられるのもベンチャー企業ならではかもしれません。
僕が入社した当時もその上司は30歳前半で管理職であり、40代や50代の経験者を束ねる組織のトップでした。頭がキレて、ビジネスセンスを感じる優秀な方で、一緒に仕事が出来たことで学ぶことが沢山ありました。
④ 世界の先端技術が身につく
ベンチャー企業の場合、特にバイオベンチャーなんかではシーズの起業化がスタートとなっている例が多いと思います。特に、大学発のベンチャーに多いです。
世界のどこの誰も成し遂げていないことを成し遂げようとするなど、ストーリーが明確で、社会貢献性も高いところが多いです。
例えば、世界初の画期的な治療法の開発など、技術者や研究者冥利に尽きるような仕事へ挑戦できます。ここでの成功経験や失敗経験が後々の自分自身の財産となり、将来の自分の進む道が決まることもあるでしょう。
また、先端技術やそのノウハウを持っていることが、自分自身の価値となって、将来転職するにしても有利になるかもしれません。
⑤ 新規事業の立ち上げ経験が得られる
ベンチャー企業は成長著しい企業の象徴です。経営に勢いがあります。
そのようなベンチャー企業は、新規事業を新たに起こしてみたり、他の企業と合弁企業を創設するなど、新規事業の立ち上げの機会に恵まれることがあります。
現在、あらゆる業界で日々新しい事業計画が企てられ、今までの常識ではあり得ない新規参入も起きています。
例えば、カメラ大手のニコンは再生医療へ参入するなど、本業以外の成長産業への投資に各社が積極的です。目まぐるしく移り変わる産業構造、社会構造の変化に遅れまいと、企業はこぞって新規事業の計画を打ち出し、その存在感を示して活路を開こうとしています。
従って、新規事業の立ち上げ経験がある人というのは転職において今後ますます重宝されていくと考えます。
ベンチャー企業で我慢強く事業の立ち上げを経験をすることで、その事業が成功したか、失敗したかは別にして、その立ち上げをした経験自体が評価されます。
仮にそのベンチャー企業の経営が行き詰っても、その経験が高い評価を受けて、他社にヘッドハンティングという事例もあり得ます。
⑥ 問題・課題に対する対応力や解決力が身につく
ベンチャー企業というのは大手企業のような歴史があるわけではありません。
それは、ベンチャー企業で仕事をすれば社内の誰もまだ経験したことがない問題・課題にも直面するということです。
通常の会社であれば、その解決策等は経験やノウハウとして蓄積されているものですが、ベンチャー企業にはノウハウなどほとんどありません。
だからこそ、自分たちで解決策を考え、実行に移していく他ありません。
これを仕事の醍醐味としてプラスに考えられる人は「ベンチャー企業」に向いている人です。
その問題解決のプロセスのなかで学べることというのは想像以上に多く、、問題・課題が起きても動じなくなるほどの対応力や解決力が身につくと思います。
まとめ
いかがでしたか。
20代の若手という立場からベンチャー企業に在籍する価値というものを大手企業と対比して書いてみました。
この価値がやがて財産となる。
それを「財産」と思えることがベンチャー企業に在籍する最大の価値だと思います。
しかし、現実はメリットばかりだけでなく、デメリットもあります。
- 「① 休みがなく、残業などでワークライフバランスが崩れる」
- 「② (事業の成功、収益化が実現するまで)待遇が悪い」
- 「③ 組織の統制が働かずストレスとなる」
- 「④ 無理な経営計画を立てる」
など、思いつくだけでもこれだけあります。
ベンチャー企業への転職はよく考え、覚悟を持っておきましょう。